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スピッツ『醒めない』

来年で30周年を迎えるスピッツのニューアルバム。『小さな生き物』から3年。近年彼らを「ロックよりもポップ」と評する声も聞くけれど、『醒めない』はこれまでで一番「ロック」に拘った一枚では?と思うほどにサウンドがロック!「人とは違うことをしてやろうぜ」という姿勢はこれまでと同じように貫かれているし、歌詞にもこれまでの曲に登場した単語や言い回しはあるが、これまでになかったシンプルでまとまったサウンドが新しい。4人の音の個は出しながら、ここまで交じり合えるとは。以下、何曲かに絞って感想を。

醒めない(通常盤)

醒めない(通常盤)

 

  

1.醒めない

≪覚えていてくれたのかい? 嬉しくて上ばかり見ちゃうよ/やけに単純だけど 繊細な生き物≫という前作『小さな生き物』を思い出すような歌詞に始まる今回のアルバムのタイトル曲。スパッとしたドラムの音が爽快!パシッとしたタッチに、崎山さんのドラムはやっぱりカッコいい!と唸らされる。うなるベースライン、主張しすぎず曲を彩るギターも最高。そしてなんといっても痺れるのが、≪任せろ 醒めないままで君に 切なくて楽しい時をあげたい≫という歌詞。ぎゅっと心を掴まれた。スピッツといえばロビンソンで歌われたような「僕と君の二人の世界」に完結している歌詞が多いように感じていたけれど、はじめて自分に向けて歌われてるような感覚に。アラフィフとなったスピッツだけれど、そんなことは関係なく、この先も何年も「醒めない」で、そして私たちを「醒めない」でいさせてくれるんだ、と心強く感じるアルバムを象徴する一曲。

 

これに関連して、自分がガーンとなった最初のメモリーって何だろうと思い返せば、サイクルヒットに入っていた「惑星のかけら」と『三日月ロック』の「ローテク・ロマンィカ」に行き着く。それまでバンドに興味なんてなかった高校生の私が、兄にたまたま借りたサイクルヒットに衝撃を受けて、そして迎えた誕生日に母にねだったのが『三日月ロック』『ハチミツ』『クリスピー』だった。そしてまた、スピッツが≪ガーンとなったメモリー≫を歌った「醒めない」を聞いて、またガーンとなったメモリーが刻まれた。連鎖反応は続いていく。


スピッツ / 醒めない 【Short Ver.】

 

7.SJ

「みなと」などなどどれも触れたい曲ばかりだが、とんでもない長さになるので、もうそこは各々聴いてくれ!という感じで、SJに。冒頭のサビの後に来るAメロが歌謡曲ぽくって印象的。昭和の歌謡曲とかも好きなのでちょっとうれしい。≪夢のかけらは もう拾わない これからは 僕が作り出すから≫という歌詞に、「ハチミツ」の歌詞を思い出す。明るい曲の多い今回のアルバムのなかでは少し暗めの雰囲気が逆に光る。

 

8.ハチの針

曲を再生し始めたときの衝撃。なんだこれ!かっけぇ!とイントロから興奮しまくり。個人的には「めちゃくちゃスピッツ」な一曲。歌詞に注目すると、まずタイトルになっている≪ハチ≫は「日曜日」や「ルナルナ」などにも登場している言葉。そして、冒頭の≪魔女≫はいうまでもなく、サビの≪ハニー≫は「ハニーハニー」や「エスカルゴ」などこれまた頻出のもの。歌詞だけ見ると、かなりこれまでのスピッツ要素が詰まっているのだけれど、やっぱりサウンドが新しい。このアルバム、つまるところ「サウンドが凄い」の一言に収斂するんじゃなかろうか。「こういう音でやりたいよね」という音への拘りの気持ちはもちろん、それをかなり理想的な形で再現できたというカンジ。だからこそ、ここまでロックなサウンドに仕上がっているのだ。≪ハチの針だけ隠し持って イキがれ≫という歌詞は「一見ポップに思えるがどこまでもロック」なまさに「とげまる」の一言で表した、スピッツを象徴する歌詞になっていてこれまた唸る。≪僕のこと捕まえたいとか なぜ?≫とマサムネさんの声で歌われて、もう倒れそう。ぜひともライブで聴きたいカッコいい一曲。

 

10.ガラクタ

「モニャモニャ」でのほほんとした次にやってくる、この曲順がまた。「ナサケモノ」もそうだが、いろんなサウンドを取り入れた楽しい一曲。この姿勢は初期から貫かれているが、毎回使い古された感じはなく、新しいのがスピッツの凄いところ。シングルでは「みなと」のカップリングとなるが、アルバムで聴いたときのほうがこの曲の面白さが引き立って、聴きごたえがあるように感じる。最近アルバムで聴くときと、シングルで聴くときの印象の違いが、かなり面白いなーと改めて感じています。シングルと聞き比べても楽しいかも。たくさんのカタカナが耳をくすぐるようで、楽しい。

 

12.ブチ

こちらも明るい楽曲。メロディーをはじめ、タッカのリズムが多用され、ビートが少し他の曲とは違うので12曲目だがダレずに聴ける。≪キセキは起こらない それでもいい そばにいてほしいだけ≫≪お上品じゃなくても マジメじゃなくても そばにいてほしいだけ≫という歌詞は、「夢追い虫」の≪美人じゃない 魔法もない バカな君が好きさ≫、「オーバードライブ」の≪美人じゃないけど 君に決めたのさ≫と似て、「特別じゃなくてもいいから、君がいい」という姿勢が変わらないことを感じさせる。(良いよなあ)

 

13.こんにちは

アルバムを締めくくる最後の曲で「こんにちは」といってしまうのはズルい。このアルバム一まっすぐで、シンプルな一曲だ。曲の構成といい、歌詞の雰囲気といい、某誌で指摘されているように「ブルーハーツっぽさ」は確かにあるのだけれど、このサウンドのきめ細やかさ、ギターの使い方、≪お茶を濁≫してしまうあたり、やっぱりどこまでもスピッツだ。短めの曲だが、ハートに直接ガツンとくる。

 

通して聞いたら「もう一回、いや、もう二回」と何回も聞きたくなる、そんな聴きごたえ抜群の一枚!拘り抜いたロック・サウンドに、スピッツはロックバンドなんだと自信を持って言える。まだまだ衰えることを知らず、毎回新しいスピッツのこれからがますます気になる。