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日記の・ようなものです

スピッツの特別じゃなくても君がいいしむしろ俺にとっては君が特別理論

楽しみにしていたアルバム『見っけ』のツアーがコロナのために延期となってしまい、恒例の夏のライブイベントもない今年。年がら年中スピッツを聞いているわたしだけれど、そんなこともあってかスピッツを1ヶ月くらい聞いていなかった。が、最近久々に『醒めない』を聞いてやっぱりいいなあと思ってからはまたスピッツばかり聞いている。なんとなくまだ聞いていなかったリモート収録シングル『猫ちぐら』を聞いたり、あんまり聞いてなかった『優しいあの子』(優しいあの子/悪役)を聞き返したり。(悪役はファンクラブツアーで聞いた時、仮タイトルだと思っていたのでまさかこのままリリースされるとは思ってなかった)。勿論他の曲も。

ここ1週間くらい、スピッツを聞き返しながら、高校生の頃にスピッツを好きになってから今までのスピッツにまつわる思い出を頭の中で再生していた。15歳の時常夜灯のオレンジの光の下布団の中で初めて『楓』を聞いた時なんか涙が止まらなかったこと、高校のお昼休みの放送で誰かがリクエストした『君が思い出になる前に』がかかって嬉しかったこと、苦しかったときに寄り添ってくれた『トンビ飛べなかった』、それぞれの曲にはじめて出会った瞬間や、もっと好きになった瞬間、色んなことを思い出すことができる。気がつけば、わたしがスピッツを好きになって今年で10年が経った。そりゃ思い出も増える訳だと思う。

10年も聞いていれば、何かしらわたしのものの考え方にも影響を与えているんじゃないかと思って考えてみると、いくつか思い当たる節があった。そのひとつが、わたしが「スピッツの特別じゃなくても君がいいしむしろ俺にとっては君が特別理論」とわたしが呼んでいるものだと思う。「南の出らがし現象(タッチの南ちゃんが、タッちゃんのことを自分で馬鹿にするのはいいが人に言われるとムカつくのと同じように、自分で言う分にはいいが人に言われるとイラっとくる現象)」然り、わたしは勝手に色々名前をつけて自分のなかで慣用句化というか、使いやすいようにしている。

話を戻すと、「スピッツの特別じゃなくても君がいいしむしろ俺にとっては君が特別理論」はもう書いての通りという感じだけれど、一応説明すると、「世間一般にいう特別なものを君が持っていなくても俺は君が好きだし君がいいし、特別なものがなくても、俺にとっては君は特別なんだ唯一無二なんだ」というスピッツの曲に出てくる考え方を、長いけれどこう呼んでいる。世間的に良いされている価値がなくても、別のところでその人を好きだと思える、素敵な考え方だ。例をいくつか挙げると、「美人じゃない 魔法もない バカな君が好きさ(『夢追い虫』」「キセキは起こらない それでもいい そばにいてほしいだけ/お上品じゃなくても 真面目じゃなくても そばにいてほしいだけ(『ブチ』)」「この街で俺以外 君のかわいさを知らない 今のところ俺以外 君のかわいさを 知らないはず(『大宮サンセット』)」「美人じゃないけど 君に決めたのさ(『オーバードライブ』)」この辺りがそうだと思う。美人だとか、魔法があるとか、そんな世間的にすごいとされるような、特別と言えるようなものを持っていなくたって、俺にとっては君は最高で特別なんだ!という歌詞たち。これが昔からとても好きだ。

思春期真っ只中のわたしというと、可愛いだとか、そんな風に何か分かりやすく優れたものなないと誰かの特別になんてなれないと思っていた。その頃、有難いことにわたしの見た目をかわいいと言ってくれる人もいて、そこから好きだと言ってくれる人もいた。それは嬉しくもあったけれど、反対にふとした瞬間ひどくわたしを不安にさせた。歳を経て、周りの人が評価してくれたかわいいという価値がなくなってしまった時、わたしは無価値な人間になってしまうんじゃないか、そうしたら誰からもいらない人間になってしまうんじゃないかと。そんな時に『夢追い虫』を聞いて、もしかしたら見た目がどうであっても、見た目以外の部分でわたしを好きになってくれる人がこの先現れるのかもしれないと思えて、うれしくて、それからわたしはこの歌詞を心の引き出しのなかにお守りのようにそっとしまっておくようになった。それから他の曲のなかに似たような考え方を見つけては、気に入った記事をスクラップするみたいに、同じように大事にしまっておいた。歌詞はわたしのなかですくすく育ち、次第に「誰か見つけてくれるかも」という思いだけでなくて、「誰かが見つけてくれなくても、わたしがわたしの素敵なところを見つけて愛せばいいじゃないか!」とも思えるようにもなった。わたしは自己肯定感が高い人間だと思うけれど、その理由のひとつはこれかもしれない。

高校とか小さなコミュニティ内でいると、そのコミュニティのなかで良しとされる基準でしか自分を評価できず、結果自分の魅力に気付けなかったり、その評価以外に自分が何も持っていないように思えて不安になったりしてしまう人もいるんじゃないかと思う。けれど、美人だとか、そんなわかりやすい価値以外の素晴らしいことというのもこの世にはあって、それを自分で見つけられれば、或いは誰かに見つけてもらえば、毎日がぱっと明るくなる気がする。自分を肯定できると思う。わたしがいろんな価値を見つけて肯定できるようにしてくれたのは、他の要因もあるかもしれないけれど、間違いなくスピッツのおかげでもある……と思うとますます好きになるね、スピッツのこと。

例には挙げていない曲のなかにも、「スピッツの特別じゃなくても君がいいしむしろ俺にとっては君が特別理論」が当てはまる曲があると思うので、遊びでまた探してみたいなと思う。